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OCTOPATH TRAVELER感想 ~名作になれたのになれなかったRPG~

概要

まず初めに言いたいのですが、私はスクエニに対して少々憤りに近い感情を抱きました。理由は後述。

 

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本作はドット調でターン制のスクエニRPG。DSで発売されたブレイブリーデフォルト系列という扱いになるのでしょうか。まあ古き良きRPGを目指した感じの作品となっております。

スクエニはFFの不調に危機感を覚えているのか、結構前から新しいJRPGブランドの開発に力を入れていますね。

 

OCTOPATH TRAVELERもそんなブランディング作品の一つであるといえます。公式サイトなどを見て頂ければわかるのですが、雄大なBGMが流れる中、美しいフィールドをドット絵のキャラクターが駆け回る。そして非常に緊張感のある素晴らしいBGMのもと、ブレイクというシステムによって緩急のある戦闘を楽しむことができます。

 

 

初記事である今回はそんなOCTOPATH TRAVELERの感想を書いていきます。購入の参考にして下さい。

 

 

評価

評価:★★★☆☆ 良作。しかし明確な不満点あり。

キャラ良し、戦闘良し、音楽も世界観も良し。約束された名作になれる要素を全て、ストーリーの品質の低さによって台無しにされた悲しすぎる作品。ストーリーの不満がなければ余裕で★4。

 

 まず概要にも書きましたが、このOCTOPATH TRAVELERという作品、RPGにおけるほとんどすべてのクオリティが非常に高いです。

 

 

良い点

●音楽が本当に素晴らしい:神曲のオンパレード

まず個人的に最も評価したいのはBGMです。RPGでは基本的に戦闘がターン制で進行するわけですから、プレイヤーのテンションを保つ上で戦闘BGMは重要な役割を担っています。その点において、躍動感と緊張感を併せ持った本作の戦闘BGMは至高ともいえるでしょう。ストーリーの進行中に流れる各キャラのテーマ曲もまた、素晴らしいの一言です。各々の個性に性格、そして背景(出身地も含めて)を彷彿とさせる雰囲気があり、声優の上手さも相まって心の底から本作の世界観に浸ることができます。

 

更に付け加えると、音楽に詳しいわけではないため表現が難しいのですが、本作のBGMはおそらく人によって好き嫌いが少なく、大体の人から高評価を得られると思います。

ようするに電波系やjazz調だとか、そういう尖った特徴がないのです。昔ながらの作品を目指しているからか、普通に神曲。その表現が一番しっくりきます。メロディーラインが分かりやすい点も良いですね。

 

これについては是非ともyoutubeとかで聞いてみて欲しいなと思います。

筆者自身、youtubeで偶然「プリムロゼのテーマ」の演奏してみたを視聴し、ドハマりしたことがきっかけで本作を購入しました。「トレサのテーマ」なんかも好きですね。ずっと聞いてても飽きません。

ここまで名曲揃いのゲームも珍しいと思います。

 

 

 ●世界観が王道で良い:心躍る美しい世界とキャラクター

 次に評価したいのが世界観、特に主人公8人の背景と性格です。

 

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美しいグラフィックとドット絵がこんなにも合うとは…

 

祖国を裏切った仲間を探しつつも、自身の目的を見失ってしまったおっさんオルベリク

一人前の商人になる夢を叶えるため、旅にでた少女トレサ

純粋に自身の知的好奇心を満たすために旅をするイケメン学者サイラス

そして父の仇討ちを心に誓った踊り子プリムロゼ

 

上記は筆者が特に好きなキャラクターですが、このようなメンバーが8人で旅をする話です。これは期待に胸が膨らまざるを得ないでしょう。
本作は8人それぞれに独立したストーリーが用意されており、プレイヤーはそれを選択して順番に進めていく形式をとっています。

分かりやすく言うと、オルベリク編1章、プリムロゼ編1章みたいな感じで各キャラの1章をクリアして、また全キャラの2章を進めていく流れです。

 

一応他キャラの章を無視して一人だけを進めることも出来なくはないのですが、レベルの関係で難易度がかなり上がります。少なくとも通常のプレイヤーであれば順番に進めていくこととなるでしょう。

 

この進め方に関しては好き嫌いが分かれると思いますが、その一方で各々のストーリーはクオリティが安定しています。安心してプレイできると言ったほうがいいかもしれません。

 

このゲームの主人公たちは概ね精神的に未成熟であったり、あるいは何らかの悩みを抱えています。例えばトレサは商人として未熟ですし、守るべき王国を失ったオルベリクは自らが剣を振る理由を見失っています。

しかし章を進めていくことでそれぞれの問題が解決され、主人公たちの成長を見ることができます。各キャラクターのストーリーは安心感のある王道展開が多く、遊んでいてとても気分がよくなります。

特にトレサの話は音楽も併せていい感じの雰囲気でしたね。あと唯一最初っから全く性格にブレのないサイラスも好きでした。先生かっこよすぎ

 

8人もキャラクターがいて別々の地域から話が始まるのですから、各地域の文化もしっかりと味わうことができます。砂漠の国、王国、雪国など、たくさんの国や人々がいるのみではなく、大教会があり宗教的であったり、コロッセオが人気だったり、悪い奴に支配されてたりもします。

 

全キャラの話をクリアしようとすると必然的に全ての地域に赴く必要がありますから、旅をしているという感覚をしっかりと味わうことができます。旅人としての気分を味わいたいという人は移動しているだけでも楽しいかもしれません。

 

 

●緩急のある戦闘システム:ブレイク、ブーストを使いこなして強敵を倒す快感

本作の戦闘システムはRPGとしては完成度が高いです。重要なのはブレイクブースト、この二つをいかに上手く活用するか、そこにすべてがかかっています。

 

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敵を上手くブレイクすることが攻略のカギ

 

まずはブレイクについて、本作の敵は雑魚でも結構な耐久力があり、適当に攻撃していても大したダメージを与えることができません。しかし弱点属性、あるいは弱点武器で攻撃することでブレイクポイントがたまっていき、一定数それをこなすことで少しの間行動不能かつ防御力が極端に下がります。そのため、いつ敵をブレイクさせ、いかにしてその間に大技を叩き込むかが攻略のカギとなってきます。

 

次にブースト、これは1ターンに一度与えられる先取り行動の権利のようなもんです。5つまでポイントをためることができ、最大で3つ使用することでそのターンの行動を強化することができます。具体的には、スキルの威力を上げたり、近接攻撃なら1ターンに使用した分だけ連続攻撃できる、といった形です。

 

この二つのシステムのおかげで戦闘には常に緊張感と戦略性があり、プレイしていて飽きません。例えばボスが力を溜めて大技を放とうとしているタイミングでブレイクしたり、あるいは味方が大技を放てるタイミングに合わせてブレイクさせたりといった形です。もちろん回復にブーストをかけることも出来ますから、ピンチを切り抜ける上でもとても重要なシステムです。

 

本作がただの「古いだけのRPG」であれば、単純なターン制の繰り返しとなっていたことでしょう。しかし本作はこの二つのシステムにより、間延びしない緩急のある戦闘を楽しむことができます。また、突き詰めれば大切なのはこの2点のみなので、変に複雑になりすぎてただ分かりにくいだけとなっていない点もgoodです。RPG初心者にも自信をもってオススメすることができます。

 

敵をブレイクさせるためには弱点属性を見抜く必要がありますから、それをどれだけ効率よく探るかも重要です。戦略性が重要なこの戦闘システムは、RPG特有の倦怠感を回避する良いシステムであると言えるでしょう。

 

またRPGのお楽しみ、jobシステムもしっかりあります。本作ではキャラクターに元々備わっており変更できない「メインジョブ」と、後から変更できる「サブジョブ」があります。サブジョブといっても各キャラ自体のユニークスキル以外はすべて使えますので、実質2つの役職をこなせるということです。このシンプルなシステムのおかげで結構なパターンのパーティーを組むことができます。色々と思考錯誤する面白さはあるかもしれませんね。(※かもしれないと書いている理由は後述)

 

さて、ここまで本作の良い点を述べてきましたが、一方で本作には悪い点もしっかりはっきりあります。以降は愚痴っぽくもなりますので、本作が大好きという人は読まないほうが良いかもしれません。

 

 

悪い点

●ストーリーの完成度が低すぎる:各キャラにストーリー上での絡みが全くない!

これが本作最大の欠点であり、名作になれるだけの要素を持った本作がそうなれなかった致命的すぎる欠陥です。私がスクエニに対して憤りを感じている部分でもあります。

RPGにおけるストーリーというのは、他のジャンルと比較しても間違いなく重要度が高いです。これは文化的な側面が強いとは思いますが、どれだけ素晴らしい要素をたくさん持っていても、ストーリーがダメならそのRPGは終わりです。本作はまさにそんな感じのゲームとなってしまいました*。

*RPGでストーリーが重要視される理由として、おそらく戦闘のシステム自体がアクション等と比較して単純化されているためだと筆者は考えている。ターン制の限界だろうか。

 

まず本作はOCTOPATH TRAVELERという名の通り、8人の主人公がともに旅をする話です。そして前述しましたが、8人それぞれの話は王道展開で安心感のあるクオリティとなっています。なんか適当なパッとで出のキャラがラスボスだったりすることもありますが、まあメインシナリオを主人公の心情変化と捉えるならば王道であることは間違いないと思います。

 

しかし!各々の話において他の主人公は全く登場しません。全く何の絡みもないのです。要するにただ行動を共にしているだけの赤の他人ってことです。あるキャラクターの話で主人公が閉じ込められるシーンがありますが、その時もなぜか1人で閉じ込められているかのように話が進みます。一緒にいるはずなのに!仲間意識が薄いとかそんなレベルではありません。驚くべきことに、8人で行動するようになった理由とかも一切ありません。

 

これだけの濃密な世界観と個性的なキャラクターを用意しておきながら、一体どうしてそれを全て無駄にするようなことができるのだろうと本気で思います。優秀なストーリーライターにしっかり仕事を依頼すれば、もしかしたら物凄く壮大なストーリーができたかもしれないのに!

 

そのため、せっかく用意された各キャラの個性もサブキャラクター達も、マクロな話の中では全く活かされていません。これはもうこの世界観を用意した人たちに対する冒涜ってレベルだと思いますし、残念ながらこのキャラクター達の絡みを見る機会は永遠に訪れないでしょう。作品が終わってしまったのですから。

 

ネタバレですが一応言及しておくと、本作には一応大きなストーリー(各キャラのストーリーが少しずつ関わっているもの)が存在します。しかしそれは隠し要素となってしまっており、普通に遊んでいるプレイヤーは気づかないですし、そもそもその大きな話の中ですら主人公たちの絡みがあるわけではないため、8人で旅をしている意味が一切ないです。

 

これは私の意見ですが、こういったマクロなストーリーを隠し要素として入れるくらいなら、何故それをメインストーリーにしなかったと声を大にして言いたい!そしてその中にうまく各主人公の話を組み込むことができれば、本作は間違いなく名作でした。スクエニは本当にもったいないことをした!話完結できないFFに金かけてる場合だろうか。

実際各主人公のラスボスも、いかにも大物って感じの敵からぱっと出のよくわからん奴とか、何ならある程度強いよくわからん動物だったりもします。だったらもう章分けたりしないで1本の話にすれば良かったのに!

この致命的すぎる詰めの甘さに対して、憤りを感じてしまいました。なんかもう明らかにブランド志向になり過ぎたが為に新規プロジェクトにミスったような感じで、携わった人たちがかわいそうです。

 

 

●戦闘バランスはちょっと悪い:魔法つよすぎ問題

これはあまり大きな欠点ではありませんが、本作の戦闘バランスはあまりよくないです。具体的には「魔法>>>物理」ってくらいのレベルで圧倒的に魔法のほうが強いです。そのため魔法攻撃力の高いサイラスは常にパーティーに欲しく、逆に物理攻撃向きのオルベリクなんかは正直いなくてもいいレベルです。

 

とは言っても物理攻撃が極端に弱いわけでは決してなく、魔法が強すぎるだけです。上級者の低レベルクリアなんかでは物理攻撃を上手く使用したりもしています。ただ、本作を普通に遊ぶ上では間違いなく、物理攻撃はせいぜい敵をブレイクさせるための手段に過ぎないでしょう。

 

また、その魔法に特化したサイラス先生のユニークスキル(役職と異なり他のキャラにはないスキル)はなんと「戦闘開始時に敵の弱点を一つ見抜く」というものです。これはブレイクが重要な本作では間違いなく最強クラスの能力でしょう。なにせ本来であれば弱点属性を探すために何ターンか使って手あたり次第攻撃しなければならないところ、サイラスをパーティーに入れるだけで最初のターンから敵のブレイクポイントをほぼ確実に溜めることができるのですから。そのため、他のキャラと比較してサイラスだけ需要がありまくります。そして必然的に戦闘回数が多くなりレベルが上がるため、サイラスの魔法の威力が更に上昇し、更に需要が高まります。

もう正直サイラス抜きでプレイするのは舐めプってレベルです。かっこいい戦士の活躍を見たい方、残念ながら本作にはそれを期待しないほうが良いでしょう。なにせ本作のスターは間違いなくサイラス先生なのですからね。

(※オルベリクのストーリー上における活躍は非常にかっこいいです)

 

また地味に「調合」というユニークスキルを持つアーフェンもずば抜けて強いです。アーフェンで弱点を突いてサイラスで大ダメージを与える。正直この戦法が安定すぎて他の戦法を試す気が起きないレベルです。

 

 

●酒場でしかパーティー変更ができない:マップの探索を面倒にする仕様

本作の主人公達はそれぞれがマップ上でしか使えないユニークスキルを持っています。例えば戦士のオルベリクなら町中の人に決闘を申し込めますし、神官のオフィーリアなら人を導いて仲間にしたりできます。

しかしこのシステムはパーティーにいる4人の分しか使えない上、キャラを交代させるためには一度町に戻って酒場に行く必要があります。

 

これの何が面倒かというと、一部のサブイベントを進めるためにあるキャラの能力が必要だったりすること。そしてそれらは酒場の近くで起きるわけではないということです。

一番わかりやすいのは紫色の宝箱ですね。ダンジョンなどで稀においてあるこれにはカギがかかっているため、盗賊のテリオンがパーティーにいないと開けることができません。しかしパーティーにテリオンがいなければ、わざわざ

 

町に戻る→テリオンを入れる→もっかいダンジョンへ

 

という動作をしなければいけません。明らかに面倒なだけですが、残念ながら本作ではこういったシチュエーションが多発します。一体どうして8人全員で行動を共にしないのか、謎すぎる仕様です。

 

 

●装備変更が面倒:パーティーメンバーしか装備を変えられない

上と被りますが、これもストレスに感じました。本作では装備の交換はパーティメンバーのものしか行えません。そのため、強い装備を付けた人を酒場に預けた状態でその装備のみが欲しくなった場合、

 

装備を付けてる人をパーティーに入れる→装備を変える→パーティーを戻す

 

という操作をいちいち行う必要があります。せめて「~が装備していますが、外しますか?」という表記程度にしておけば良かったのに。そのため、ちょっと装備をいじるだけでも結構面倒に感じます。だからなぜ君たちは8人で行動していないのだ…。

 

総評

長々と書きましたが簡潔にまとめます。

まずOCTOPATH TRAVELERは素晴らしい世界観、キャラクター、そしてBGMが揃っており、戦闘システムもとても面白く、更に個々のストーリーは王道と、安定したクオリティを有する作品です。買って大損した!なんてことはないと思いますし、やり込み要素も多いですからRPG好きにもお勧めできるでしょう。

このように多くの強力な要素を持った本作ではありますが、その一方で壮大なストーリー等を求めてはいけません。仲間同士で喧嘩したりとか、助け合ったりとか、そういうのを期待している場合には間違いなく裏切られてしまいます。本作はあくまで短編集です。公式サイトなどにはそんなこと書いてありませんがね。

 

名作になれたのに良作で止まってしまったRPG

 

これがOCTOPATH TRAVELERを遊んだうえでの率直な感想です。

本作の評価を調べると、スクエニだからかドット絵だからか、その「雰囲気」だけに流されてこうした悪い点を無視したレビューが散見されます。

彼らもアフェリエイト目的なのですから基本的にはむやみやたらと褒めちぎるような内容を投稿したいのでしょうが、ブランド力などに影響されない正当な評価を記載するべきだと思います。

 

お勧めできる人

・一人で世界を旅する気分を味わいたい

・王道のストーリーを楽しみたい

RPG初心者で、安心して買える作品を遊びたい

・長編よりも短編のほうが好き

・戦闘の楽しいRPGをプレイしたい

・やり込みが好き(やり込み要素はかなり多いです)

・本作の名曲の数々に心打たれた

 

 

お勧めできない人

・過去のFFシリーズのような壮大な話を期待している人

・仲間同士の掛け合いを期待している人

・高難度なRPGを期待している人

 

 

余談

完全に余談なので最後に書きます。ネタバレっぽい部分もあります。

プリムロゼって良いですよね。暗い過去と強い意志を持っていて、間違いなく人気のキャラクターだと思います。

ただ彼女のストーリーだけはちょっと納得できない終幕でした。正確にはラストのイラストに対してですが。

正直彼女だけは他のキャラほど救済されてないと思います。まあ、目的が目的ですし、本人にも迷いが全くないわけではなかったですからね。あくまで悩み抜いた末の行動だったのでしょう。父が復讐を望んでいるわけではないという考えもちゃんと持ってましたから。

であるならば、彼女の最後の表情があんなにすっきりしているのは、どうもおかしいだろと思ってしまうのです。もう少し寂寥感のある中で、しかしこれまでのように自らを鼓舞し、強く生きていこうと決意するような表情をしているべきだと思いましたけどね。あの表情は明らかに爽やか過ぎです。彼女の内面から払拭しきれていない暗い感情が全く表現されていません。一番好きなキャラだけに、ちょっと納得できないんだよなあ…。